【正寿院】ハートの窓と天井画の穴場スポット。風鈴まつりも有名な可愛いお寺。アクセス解説

京都駅からJRに乗車して約20分で到着できるお茶や源氏物語で有名な宇治市。その宇治市の山奥に非常にアートにあふれた正寿院があります。

とにかく目を引くハートの形の猪の目窓と天井に配置された美しい天井画の数々が有名ですが、魅力はそれだけなく他にも襖絵や板度も美しく、京都の中でもとりわけ“可愛いアート”に特化しているお寺です。最近はSNS特にインスタ映えスポットとして話題になってきていますが、なかなかアクセスしにくい事もあり団体客などは少なく、京都の混雑する人気観光地に比べて静かでゆっくりとした時間が過ごせるという、お勧めのスポットです。また、夏の期間は境内に風鈴をたくさん飾った「風鈴まつり」が行われ、京都の夏をその音色で風流に過ごせる場所でもあります。寺院の中で過ごす事が多いので雨天時の急な観光予定の変更にもお勧めのスポットです。そんな正寿院の魅力の紹介とアクセス方法などについて解説いたします。

<この記事はこんな人にお勧めです>

  • 京都「宇治」方面、「平等院鳳凰堂」に旅行、観光を予定や計画をされている方
  • 京都の中でも人混みの少ない穴場スポットをお探しの方
  • インスタ映えスポットをお探しの方、美術、芸術、アートが好きな方
  • 京都で避暑地をお探しの方
  • 雨天時の京都観光のおすすめスポットをお探しの方
  • ドライブ、ツーリング好きの方

目次

<正寿院とは>

読み方は「しょうじゅいん」。寺伝によるとその歴史は約800年の正治2年(1200年)に、飯尾山にあった医王教寺という大きなお寺(現在は廃寺)の塔頭寺院として建立されたと伝えられています。

山号は慈眼山(じげんざん)で、お寺の少し奥に瀧谷という小さな滝があり、ここで祈雨の修法を行うと龍神さまが現れ、恵みの雨を降らしたということから当院は瀧谷寺(りゅうこくじ)とも云われていました。御本尊は十一面観世音(鎌倉時代~後期 町指定文化財)で50年に1度だけご開扉される秘仏。また当院の不動明王坐像(鎌倉時代 国指定重要文化財)は日本を代表する仏師の一人 快慶の作

夏には、境内に2000個の風鈴が吊られ、涼を感じる風鈴まつりが行われることから、風鈴寺とも云われ親しまれています。また境内では様々な体験として、数珠づくりや写経・写仏、庭を見ながらヨガやお茶でお香づくりなどが催されており、見る・感じる・体験して学ぶことができるお寺となっています。

お寺の敷地内では大きく分けて襖絵や風鈴が鑑賞できる「本堂」とハートの形をした猪の目窓や美しい天井画のある「客殿」に分かれており、受付は本堂にて行われます。客殿へは受付で受け取るパンフレットを持って訪れることで入館スタンプを押してもらって入館する事ができます。

<客殿 「則天の間」>

ハートの形をした猪目窓と美しい天井画が特徴的な非日常を感じられる客殿。ガイドブックやSNSなどでも紹介される機会が多くなった要因のお部屋です。

「則天の間」という名前は自然に身をゆだねる事で私たちも自然の一部である事を感じ、我を忘れるという則天去私という言葉から名付けられています。

猪目窓と縁側からは美しい自然が顔を覗かせます。春は桜、夏は青紅葉、秋は赤く染まった紅葉、冬は雪景色と四季折々に合わせてその表情を変えるのが魅力的。小鳥のさえずりや小川の流れる音、自然に吹き込む風に癒されながら静かな時間を過ごす事ができる、名前の由来にぴったりなお部屋です。

ヨガや季節に応じての茶会などのイベントも各種開催されています。

■実はハートじゃない? ハートの形に似た「猪目窓」

まずはこの正寿院が知れ渡るきっかけとなった客殿の猪目窓からご紹介。最近はSNSやガイドブックでも多くの方が目にしたことがあるのではないでしょうか。

日本建築にハートの形の窓とは何とも珍しい組み合わせですが、ハートの形とよく紹介されていますがこれは実はハートではなく、よく酷似した「猪目」という伝統模様。その歴史は1400年前から伝わるとの事で、昔から災難除けのご利益として灯篭や柱にある釘隠し、窓や屋根にある懸魚(主に神社仏閣の屋根に取り付けられた妻飾り)としてたくさん使われてきました。京都の他の神社仏閣や建築でもよくよく見るとこの猪目を確認する事ができます。なぜハートに酷似しているのか?という理由は諸説あるそうですが、仏教に縁があり縁起が良いとされている菩提樹(ぼだいじゅ)の葉の形から着想を得たという説が有力のようで、ここ正寿院でも建物の安全祈願やそこに住まう人々の安全を願っての願掛けの形として、猪目の形の窓を設置したとの事です。

異国の文化のハートと日本の文化の猪目、名前は違えど偶然にもどちらも愛にあふれている事を指すのは何とも面白いですね。猪目窓にはガラスなどはなく、窓からの景色をそのまま楽しむことができ、ハートに似た猪目にかたどられた景色はとても幻想的です。時期によっては夕刻にこの猪目窓から太陽の光が差し込み、その形を床に映し出すという「幸せのおかげ」と呼ばれる現象も楽しめます。噂では8月下旬から9月上旬の夕刻であれば見られるとの事。機会のある方はぜひ、夕刻に訪れてみてください。

■花と日本を感じる美しい天井画の数々

「則天の間」の天井一面に描かれた160枚にも及ぶ天井画の数々は圧巻です。この天井画は「花と日本を感じる」をテーマに描かれています。

元々は本堂にある江戸時代の天井画の復興という形でプロジェクトが始まり、本堂に描かれた曼荼羅の「それぞれに役割があり、お互いを尊重し、支えあう事でいのちを生かしあう」という教えに基づき、客殿の天井画はできる限りたくさんの画家に携わってほしいという事から20代~70代の日本画家約90名が約6年の時を経て完成したものです。よく観察するとそれぞれ絵のタッチが異なっているのが分かります。描かれているのは花の絵と風景が中心ですが舞妓・鬼・紋様・漢字・龍まで多種多様に描かれ、四隅には守護神として東に青龍、西に白虎、北に玄武、南に朱雀の四神も描かれています。1枚1枚がとても素晴らしくそれぞれの画家の個性を感じる事ができます。個性が混ざり合うという曼荼羅の教えを模した見事な空間で、どれだけ時間をかけても見飽きない魅力があります。仰向けで寝ながら見る事も許されているので、ぜひお気に入りの一枚を探してみてください。

<本殿>

正寿院の魅力は客殿の猪目窓と天井画だけではありません。紹介される機会の少ない本殿ですがお庭や見事な襖絵、可愛いリスが描かれた板戸も楽しむ事ができ、本殿でも様々なアートに囲まれた空間を楽しむことができます。また、夏の期間には全国から集めた風鈴を鑑賞できる「風鈴祭」も開催され、お庭や本殿縁側などで風流な時間を過ごす事かできます。加えて常時閲覧は不可能ですが、50年に一度しか見ることのできない十一面観音菩薩や、快慶作による木造不動明王坐像など伝統ある文化財などもございます。

■美しい4枚の襖絵

本殿には4枚の襖絵があり、それぞれ間近くで鑑賞する事ができます。まず入口付近には竹の緑と黄色の背景のコントラストが美しい虎の襖絵、可愛らしい紅葉と子供の描かれた柔らかいタッチの襖絵「紅葉唐子図」が並び、お庭の見ることのできるフロアでは迫力のある龍の襖絵「龍図」が配置され、奥へ進み別のお部屋に行くと松と鳥が描かれた襖絵「松藤鳥図」も鑑賞できます。これらの襖絵は最近奉納されたもので、日本画家 諌山宝樹(いそやま たまじゅ)さんという現役の京都在住の女性画家の描かれた作品。どことなく柔らかく繊細な様子が美しく、和むような作品たちが本殿を訪れる人をそれぞれテイストの異なる美で楽しませてくれます。

■板戸:葡萄栗鼠図

通路にある板戸には葡萄を狩ろうとする17匹の栗鼠(リス)の様子が描かれた可愛らしい絵が描かれています。

こちらは可愛いだけでなく、実は問答となっていまして17匹のリスを以下の条件で3班(板戸の説明では3人で)に分けるというなぞかけとなっています。

・以さんは、17匹中の2分の1

・呂さんは、17匹中の3分の1

・波さんは、17匹中の9分の1

に分けるというもの。皆さんはお分かりになられますか?板戸の注意書きまで可愛いので、ぜひご覧ください。

魅力の多いお庭

本殿のお庭にも素敵なものが様々散りばめられています。花手水は自ら形を作れる場所もありお気に入りの形で作ることができます。また、縁起物である叶紐で覆われた「地蔵堂」の神聖な佇まいも魅力です。本殿の中からお庭を一望しながらくつろげます。

<夏の風物詩:風鈴まつり>

※夏季限定

風鈴のお寺としても知られる正寿院。毎年夏の期間には約2000個もの風鈴が設置されて来館者を迎える事から「風鈴時」の愛称でも親しまれています。こちらが風鈴を飾り始めたのは、昔から風鈴には厄除けの意もあることから御本尊である観音様の厄除けにもあやかり、風鈴を吊ったことが始まり。全国に風鈴のまつりが開催されていますが、この正寿院はその先駆けとの事です。全国の風鈴まつりの中でも、宇治の茶畑と山、空を背景に風鈴が鳴り響く景色はここだけにしかない魅力。元々この地域は京都市内と比べて5度ほど涼しいそうで避暑地として知られる場所。京都の蒸し暑い夏に、気温と風鈴で涼をとるという風流な過ごし方をお楽しみいただけます。本殿の庭では風鈴で囲まれた回廊を楽しむことができ、本殿内でも畳を敷いた窓際でくつろぎながらその美しさをゆっくりと堪能できるのがうれしいです。

人間の五感「眼耳鼻舌身」で涼を感じて頂きたいという思いから、目では47都道府県から集めた風鈴の数々の美しさを、耳で風鈴の音色の美しさを、鼻は自然に囲まれた木々の香りや茶畑の香りを体感し、舌はお茶の本場である宇治茶の味わいを、身は風鈴の絵付けなど体験を通じて涼を感じる事ができます。正寿院入口を出てすぐに風鈴の絵付けのコーナーが用意されているほか、茶葉をつぶして行うお香作り体験、ヨガ教室など体験できる事が多いのも正寿院の魅力。京都市内の観光地では味わえない体験として、京都の涼の取り方としてお勧めです。

■2024年の風鈴まつりについて

【期  間】2024年6月1日(土)~9月30日(月)※本年は期間延長

【拝観時間】9時~16時30分※最終受付は閉門15分前まで

【公式HP】快慶のお不動さん 高野山真言宗 正寿院 (shoujuin.boo.jp)

<アクセス・基本情報・その他情報>

■2025年は50年ぶりに開扉される十一面観音菩薩像が鑑賞可能に

正寿院のご本尊である「十一面観世音」は50年に1度だけご開扉される秘仏。制作は室町時代と目されており、この時代の制作としては群を抜いた出来栄えで、中世彫刻史上で大変貴重な像と評されています。そんな貴重な機会が2025年の4月1日~11月30日の期間に訪れます。

2024年は訪れる機会がない方、もう一度訪れたいとお考えの方はぜひご来館いただき貴重なお像をご覧ください。

■正寿院 基本情報

【拝観時間】9時~16時30分※最終受付は閉門15分前まで

【住  所】〒610-0211 京都府綴喜郡宇治田原町奥山田川上149

【拝観料】通常600円 / 風鈴まつり期間中 拝観料800円(菓子付き) ※車・バイクで来館の際は別途、駐車場協力金200円

【最寄り観光地】
平等院鳳凰堂 / 宇治上神社 / 宇治神社 / 三室戸寺 / 宇治市源氏物語ミュージアム など

■正寿院の行き方、アクセス方法

観光雑誌やSNSでも目にする機会が多くなってきている正寿院ですが、そのアクセス方法まで詳しく記載している所は少ないようですので、書き記します。山奥のため電車はなく徒歩でたどり着くのは現実的ではありません。バス・タクシーでの訪問が一般的です。バスは本数が少ないので要注意です。

先ずは宇治市へ

京都駅から出発の場合はJR奈良線に乗車。乗車時間は約22分、運賃は240円

【宇治駅からバスの場合】 ※土・日・休日限定

京阪宇治駅、JR宇治駅前と正寿院入口までをつなぐ便利な「宇治茶バス 休日ダイヤ」が運行されています。土曜日と休日限定とはなりますが最も一般的で負担の少ない訪問方法です。

京都駅から訪れるのであればJRが一般的。ただし京阪・JR駅前を出発するバスは行きは9時台、13時台 / 帰りは(正寿院から京阪前・JR前)は12時台、16時台の行き帰り各2本しかないので要注意です。

運賃:京阪前出発は670円 / JR宇治駅前は650円、乗車時間は約30分
   時刻表などの詳しくは下記よりご確認ください。

京都京阪バスで行こう 正寿院 | 京都京阪バス株式会社 (kyotokeihanbus.jp)
※情報は2024年8月現在

【タクシーの場合】

宇治駅から約30分程度 (距離約18キロ)

【車・バイクの場合】

宇治から国道307号線を真っ直ぐ進む。

駐車場は2か所あり、計70台まで駐車可能。駐車料金はないものの、風鈴まつりの際は正寿院の受付で駐車場整備協力金として200円を求められる。

道中は山道を抜け、宇治茶の田園風景を見渡せるなどドライブ・ツーリング好きの方にはお勧めです。

宇治の田園風景